「決算書では黒字なのに、なぜか手元の現金が増えない……」
「今月の支払いが厳しい。利益は出ているはずなのに、どうして?」
経営者の方からよくいただく切実なお悩みです。いわゆる**「勘定合って銭足らず」**の状態は、放置すると黒字倒産のリスクさえ孕んでいます。
1. そもそも「利益」と「キャッシュ(現金)」は違う
まず、大前提として理解しておくべきなのが、「会計上の利益」と「手元のキャッシュ」は必ずしも一致しないということです。
なぜズレが生じるのか?
日本の会計制度では「発生主義」という考え方が採用されています。これは、現金の動きに関係なく、売買の約束が成立した時点で売上や費用を計上する仕組みです。
売上: 商品を引き渡した時点で計上(まだ入金されていなくても利益になる)
費用: サービスを受けた時点で計上(まだ支払っていなくても費用になる)
この「タイムラグ」こそが、利益があるのにお金がない状態を生み出す最大の要因です。
2. 会社にお金が残らない5つの主な原因
なぜ利益とキャッシュのバランスが崩れてしまうのでしょうか。主な原因を5つに分解して解説します。
① 売掛金の回収遅れと在庫の増加(棚卸資産)
売上が上がっても、代金が回収されるまでは「売掛金」という帳簿上の数字に過ぎません。回収が遅れれば、利益はあっても現金は増えません。
また、商品を仕入れた時点でお金は出ていきますが、それが売れるまでは「在庫(資産)」となり、費用(売上原価)にはなりません。**「過剰な在庫はお金が形を変えて眠っている状態」**なのです。
② 借入金の元金返済
ここが最も見落としやすいポイントです。銀行からの借入金の「利息」は経費になりますが、「元金の返済」は経費になりません。
つまり、利益から税金を払った後の残り(税引後利益)から元金を返済しなければならないため、計算上は黒字でも、返済額が大きければ手元のお金は減っていきます。
③ 減価償却費の仕組み
**減価償却(げんかしょうきゃく)**とは、高額な設備や車両を購入した際、数年に分けて費用化することです。
購入した初年度にドカンとお金が出ていきますが、費用として認められるのは分割された一部のみ。逆に2年目以降は、お金が出ていかないのに費用だけが発生するため、利益よりもキャッシュが多くなる「自己金融効果」が生まれます。このズレを把握していないと、資金繰りの予測を見誤ります。
④ 税金の支払い
利益が出れば、法人税や住民税、事業税が発生します。利益が出ているからといって全てを使ってしまうと、後からやってくる納税資金が足りなくなります。
⑤ 役員借入金や不明瞭な支出
経営者個人の財布と会社のお金が混ざっている場合や、使途不明の支出が多い場合も、数字上の利益とは裏腹に現金が枯渇する原因となります。
3. 会社のお金を増やすための解決方法
お金を残すためには、単に「売上を伸ばす」だけでなく、「キャッシュフロー(お金の流れ)」の管理を徹底する必要があります。
資金繰り表の作成と活用
まずは現状を可視化しましょう。「いつ、いくら入って、いつ、いくら出るのか」を記した資金繰り表を作成します。これにより、3ヶ月先、半年先の資金不足を事前に予測し、対策を打つことが可能になります。
入金サイクルを早く、支払サイクルを遅く
商売の鉄則は、**「入金は早く、支払は遅く」**です。
売掛金の回収条件を見直す(末締め翌月末払いを20日払いにするなど)
買掛金の支払いを交渉する
これだけでも、手元のキャッシュ保有量は劇的に改善します。
節税とキャッシュのバランスを考える
過度な節税(いわゆる「お金を使う節税」)は、結果として手元の現金を減らします。
「100万円の経費を使って30万円の税金を減らす」のと「70万円の現金を残して30万円の税金を払う」のでは、後者の方が会社は強くなります。
4. 「キャッシュ診断」で経営の健康状態を知る
会社の状態を客観的に把握するために推奨されるのが**「キャッシュ診断」**です。
キャッシュ診断とは?
決算書や試算表をもとに、「なぜお金が残らないのか」を数値化して分析することです。
債権回収の効率(売上債権回期間)
在庫の滞留状況(棚卸資産回転期間)
借入金の返済能力(債務償還年数)
これらを分析することで、「利益が出ているのに苦しい」という漠然とした不安の正体が明確になります。
5. 行政書士などの専門家に相談するメリット
「数字は苦手だし、日々の業務で忙しくて資金繰りまで手が回らない……」
そんな時こそ、外部の専門家を活用してください。
行政書士が財務相談に乗る理由
行政書士は、許認可申請や契約書作成のプロであると同時に、法的な視点から経営を支えるパートナーです。
公的な書類作成に強い: 融資申し込みに必要な事業計画書の作成をサポートできます。
客観的なアドバイス: 内部の人間では気づけない「お金の詰まり」を指摘できます。
ワンストップの安心感: 法務(契約)と財務(資金繰り)の両面から会社をガードできます。
経営者が一人で抱え込むと、判断ミスが命取りになることもあります。第三者の専門家が伴走することで、精神的なゆとりが生まれ、本業に集中できる環境が整います。
6. まとめ
「利益が出ているのにお金が残らない」のは、決して珍しいことではありません。しかし、その原因が「売掛金の回収漏れ」なのか「借入金のバランス」なのか、あるいは「在庫の持ちすぎ」なのかを把握できていない状態は非常に危険です。
まずは自社のキャッシュフローを整理し、「利益=お金」ではないという意識を持つことから始めましょう。
今の状況を打破し、強固な財務体質を作りたいとお考えなら、まずは現状の「診断」から始めてみてはいかがでしょうか。
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